TOKYO MX NEWS
前のニュース

都職員に言語技術教育 『活字離れ対策』まずは“足元”から

次のニュース
2010年9月2日


動画
 若者を中心としたいわゆる『活字離れ』を憂慮した東京都は「まずは足元から」と都職員を対象にした教育プログラムを4月からスタートさせました。新人職員を対象にしたトレーニングも導入しました。

 「本を読む習慣がこれからどうなるのか、あるいは、ものの考え方をきちんと論理立てて言うにはどうしたらいいのか。そういうことがこれから危ないなと感じる」と話す猪瀬副知事…。名付けて『言葉の力』再生プロジェクトは、まず言語や読書に詳しい専門家を招いての講演から始まりました。大きな狙いは職員の読解力、表現力をアップさせ、円滑なコミュニケーションにつなげようというものです。これまでに6回開催し、講師はバラエティーに富んでいます。一見、活字には関係なさそうな日本サッカー協会の田嶋幸三専務理事も招かれました。田嶋さんは「サッカーでも一言でパッと言えるかどうかだと思っている。そのベースにはちゃんとした言語技術があって、言いたいことが伝わるようになると思う」と講演しました。
 講演の後は講師を囲んでのブレーンストーミングで対策の案が出てきます。猪瀬副知事の「都庁の中で実践する場合はどのトレーニングがいいのか」という投げ掛けに対し、つくば言語技術教育研究所の三森ゆりか所長は「絵を分析するのと、その方法論を使っていくつか短いものでいいから読み方を教えること」だと提案しました。
 そして8月、今年の新人職員の希望者を集めた『言語技術研修』が2日間にわたって行われました。初日は小説の内容を読み取ることから始まりました。講師は日本では数少ない言語技術の専門家、三森ゆりかさんです。しかし講義が終わり猪瀬副知事が「どういう技術があればいいのかもう1回言ってみて」と問い掛けても受講者は「……。やはり大枠をつかんで…」と答えるのが精いっぱいでした。副知事にはまだまだ不満のようです。
 言語技術講習の2日目は1枚の絵を分析しました。『絵画を分析して人に説明しよう』という課題です。これも読解力のトレーニングです。受講者たちは「ただ遊んでいるというのも考えられる」「遊んでて楽しげだと思った。…けど、多分、みんなちがいますよね?」などと話し合いました。この様子を見た三森さんは「何となく感覚的に絵を読んでいませんか? 『だろう』とか『そうじゃないか』で読んでいませんか? 証拠を全部、絵の中から1つずつ拾い上げます。そうすれば『だろう』とか『多分』がなくなる」と指摘しました。先生の一言で学んできた手法を思い出した受講者は「時間は完全に想像でしたね」と話し、「(絵の)差し込む光の角度!」「日が高ければ差し込まない。昼前だ」などと次々に分析が進みました。三森さんは「文章や細かい情報を分析する前に、絵を使って情報分析の基本を教える」「状況や対象に対して細かいところまで関係性を見極めようと頭が働くようになる」とトレーニングの意味を解説します。
 2日間の研修が終わったところで、猪瀬副知事が再び現れました。猪瀬副知事は受講者の反応に対し、「OK。いい答えだ」「非常にいい答えだね」と、職員の話し方に初日とは全く逆の反応をしました。講義を終えた受講者たちは「かみ砕いて都民に分かりやすく説明するときに役立つと思う」「何が分からないのかも分からないということがあったが、情報1つ1つに意味があってそれを拾っていくことで結論を出さなければいけない」などと話していました。猪瀬副知事は「すぐパッと答えが出る。言いたいことは一瞬で言わなければいけないから、言語技術の習得はかなり進んだ。これだけ成果があるならもっと広げたい」と話しました。
 都では、ほかにも教員向けや若者の就職支援担当者らに言語研修を行っています。『言葉の力』は再生するのか、ユニークな取り組みは今後も続きます。