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着物に魅了された人々 アンティーク着物を現代に

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2010年10月26日


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 お正月や花火大会などで着物や浴衣を着ることはあっても、普段着る機会がないという方は多いのではないでしょうか。その良さを見直してもらおうと今、アーティストたちがアンティークの着物や和の素材を使った作品を数多く生み出しています。着物に魅了されたアーティストと、着物を日常的に取り入れようとする人たちを取材しました。

 今月半ば、表参道で開かれたのは日本の伝統美にほれ込んだ4人の作家による展示・販売会、その名も『花鳥風月』です。デザイナーの山田百里恵さんは洋服や帽子、バッグなどさまざまなものを着物地や帯地から作っています。また、手作りのガラス玉や皮などを組み合わせ和の素材の良さを表現している着物アクセサリー作家の街風奈緒子さんは「着物に魅了されるのは着物自体がものすごく魅力的なのと、私が日本人だからというのもあると思う」といい、昭和初期より前の着物の柄を水彩画に取り入れている水彩画家の楠堂葵さんは「昔の柄は今見ても斬新だし、これは絵に取り入れて――例えば、人の絵だったら入れ墨みたいに入れてしまえばすごく面白いんじゃないかと思った」と話します。さらに、着物地のほか古いかんざしや中国ボタンなど日本だけではなく東洋の素材を使っているアクセサリー・フラワーデザイナーの増間眞理子さんは「職人さんの技が光っているものをできれば残していきたい」と話します。4人は“古い和の素材の良さを見直してもらいたい”という思いをグループ展で結集させました。展示されている楠堂さんの水彩画はその表れの一つで、よく見るとアクセサリーやドレスなど、ほかの3人の作品が絵の中に盛り込まれています。展示会を訪れた人は「いいものは、やっぱりいつでもいい」「気持ちが和みます」「もう一度、たんすの整理をしたいなと思いました」などと話していました。
 この展示会の発起人で着物リメイクのデザイナーの山田百里恵さんはこれまで着物を着たこともなかったといいます。山田さんは「(着物デザイナーの)池田重子先生と知り合いだったので、池田先生のお宅にお邪魔したときに古いコレクションを拝見して『がーん』『うそみたい』ってすごく衝撃を受けて、そこから日本の古いものってすごいんだってことを知りました」と話します。その後、着物の布を集めていった山田さんはコレクションを使って洋服を作り始めます。催事場に出品すれば大盛況という日々を送る中で、あるお客さんに出会いました。山田さんは「お客さんが『結婚式用の着物ではないのであまり見栄えがしなくて面白くないわ』という話をしていたので、『じゃあ、その着物でドレスにしませんか』と提案したら『あっ面白いかも…』みたいな感じでとんとん拍子に話が進んでいった」と当時を振り返ります。これをきっかけに着物を使ったドレス作りが始まりました。
 ことし春のある日、山田さんのお店を訪れたのは結婚式を控える女性・金子奈央さんと、お母さんの律子さんでした。お母さんが成人式で着た着物をドレスにしてもらおうとやってきました。2人の希望を聞きながら、山田さんがデザインを描いていきます。娘の奈央さんは「ウエディングドレスを本で見て、『ここの柄が着物だったら素敵だろうな』っていうイメージで来ました」と話し、母の律子さんは「40年間ずーっとたんすにしまったままだったので、本当にうれしいの一言です」と話していました。それから3ヵ月後――。「姫系というか、ふんわりと仕上げてほしい」という奈央さんの要望を取り入れて、菊の柄を全体的に生かし小さなリボンがたくさんあしらわれました。帯地もアクセントに使われ、2人も大満足のようです。
 一方、仙台の早坂菜々子さんも、お母さんが成人式で着た着物のリメイクを注文していました。心配していたのは着物のピンク色でした。普段は取り入れない色のため、違和感を覚えないデザインを山田さんに相談してきました。ピンク色への抵抗感は、山田さんの「ピンクの生地に、あえてグリーン色をすそにぐるりと配置する」という大胆な色を組み合わせる提案で見た目がぐっと引き締まり、解決しました。これに大きなリボンを付ければ完成です。出来上がったドレスを実際に見た早坂さんは「すごくかっこいい。イメージ以上の出来です」とうれしそうです。だんなさんには結婚式当日に初めて見せるということで、早坂さんは「そのまま(着物のまま)では私は着られないものだったので、こういう形で着られてすごくうれしい」と話していました。
 結婚式など人生最大のイベントで思い入れのある着物を身に付けたい人は今も多くいるようです。デザイナーの山田さんは「このままどんどん10年20年30年たつと、着物を一度も着たことのない大人ばかりになってしまう。着物を着物のまま着ることももちろんとても大切なことだと思うが、もっと普通にお洋服にして着やすいようにすれば日本の良い着物の素材も絶滅しないで済むんじゃないかな」と話します。
 日本に伝わる芸術、着物――。それは形を変えながら、現代に受け入れられていくのかもしれません。