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世界自然遺産へ 小笠原諸島で新種のアリを発見

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2011年5月19日


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 世界自然遺産への登録を勧告された小笠原諸島で最も南にある南硫黄島で採取された2種類のアリが、学問的に新種であることが確認されました。4年前に四半世紀ぶりに行われた環境調査の成果の一つです。諸島の中でも唯一人間の手が加わっていない島を探検した研究者を取材しました。

 南硫黄島は東京の南方1300キロに浮かぶ周囲7.5キロの無人島で、山頂は標高916メートルで平均斜度は45度です。2007年6月に研究者ら23人が入りました。人間が踏み込むのは25年ぶり3度目です。調査隊長を務めた首都大学東京の加藤英寿助教は「島を実際に見るとその険しさに圧倒される」と話します。
 形成以来、一度も大陸とつながったことがない海洋島で、独自の生態系を持っています。加藤隊長は「最も謎に満ちた場所と言える」「すさまじい数の鳥がいる。他の島では見られない状態」と話します。加藤隊長は専門分野である植物の標本を700以上持ち帰りました。
 一方で、神奈川県立生命の星・地球博物館の苅部治紀さんは「ノイノーゼになるくらい虫がいない。生物のすみかとしては非常に単調な場所で、他の大陸や島とつながったことがない孤立した海洋島で面積も小さいので、たどり着く生き物がすごく少ないのだろう」と話します。苅部さんの専門は昆虫です。それでも8日間必死に調査し、今回新種と確認された2種類のアリも採取できました。その他にも名前が付くのを待っている新種がいくつもあります。苅部さんは「最長3万年くらいで固有種への進化が起こったことは驚くべきこと。そういう意味で『進化の実験場』と言われる」と話します。
 南硫黄島の自然の固有性は昆虫だけではありません。後世に伝えなければならないことはなんでしょうか。加藤隊長は「目指すべき姿は『形』ではなく『仕組み』だということが分かった。つまり、島は独立して存在しているのはなく海鳥を介して海と島はつながっている。海鳥を介して魚が死体やふんになって栄養塩という形で島に供給されて、植物を育んでいる。植物をすみかにしたりえさにするコオモリやカタツムリ、昆虫などが利用して、それぞれも利用している」と話します。父島など他の小笠原諸島も以前はそのような『仕組み』がありましたが、人間とともに入ってきたネズミが海鳥を滅ぼし、生態系が大きく崩れたとみられています。加藤隊長は調査結果について「海洋島本来のシステム、生態系のシステム、生物間の相互作用を取り戻すことの方がはるかに重要ではないかと感じた」と話します。
 世界遺産に登録されることが有力視されていることについて加藤隊長は「期待と不安が入り混じっている。(世界遺産になることで)行政や地域住民や研究者が協力して自然をより良い形で残していこうという方向性が進むことは非常に望ましいこと」とした上で、「ただ一方で、観光開発が進むことによって自然が痛めつけられて危機遺産になってしまっては元も子もない」と話します。また苅部さんも「赤ちゃん見たいな自然。非常に弱い。外部からちょっとウイルスが入ると大変なことになってしまうようなイメージを持ってもらわないと非常に大きなダメージを残してしまう可能性がある」と指摘します。
 小笠原諸島が世界遺産候補として評価された“生態系”をどのように残していくのか。これからの私たちの取り組みにかかっています。