*2006.08.9up*
第9回*安奈淳さん 第9回*安奈淳さん「人生に無駄な経験は1秒もない。いいことも悪いことも、すべてが財産」

――― お仕事中心の毎日だとは思いますが、仕事以外に最近、何か趣味などは楽しんでいらっしゃいますか?

8月の舞台に向けて、今、必死で台詞と歌を覚えているところです。 本当に仕事一筋の毎日ですが、好きでやっていることなので、それが趣味でもあるんでしょうね。 膠原病で入退院を繰り返し、2年間、闘病生活を経験しましたが、 今は病気になる前より、もっと仕事に対してひたむきかもしれません。 病いを患ったことで、人間誰でも、与えられた時間には限りがあるんだと気づかされたんです。 だから、自分にとってどれだけ満足のできる時間の使い方ができるか、より真剣に考えるようになったんでしょうね。 時間があると、ピアノを弾きながら歌のアレンジをしたり、 ジムで身体を鍛えたり、なにかしら仕事に返ってくることをしています。

――― シャンソンをよく歌っていらっしゃいますが、若い時に歌うシャンソンと、年齢を重ねてから歌うシャンソンでは、深みが違うような気がしますが。

私とシャンソンとの出会いは、宝塚時代。ですから私とシャンソンは、切っても切り離せません。 シャンソンは内容的に深い歌が多くて、まさに"人生を歌う"という感じですよね。 ですから若い時に歌って分からなかったことも、今になって、「こういうことだったのか」と深く理解できる。 若い時とは、まったく違う歌い方をしている自分に気づきます。 私の師匠は今80代半ばですが、まだ一線で歌っていらっしゃる。本当にすばらしいですよ。 そのくらいの年齢になっても歌っていられるなら、私なんか、まだまだヒヨコ(笑)。 シャンソンには、人生の積み重ねの中からかもし出される味わいがあるんですね。 ですから、いいことはもちろん、たとえそのときは苦しいことでも、 人生で無駄な経験は1秒もない。すべて、蓄積になると思います。

―――病気を経験したことで、考え方やものごとの感じ方が何か変わりましたか?

2000年に救急車で緊急入院し、5日間、生死をさまよって、 まわりの方たちは「お別れの会をどうするか」という話もしていたそうです。 ところが生き返ることができ、こうして元気に仕事をしているわけです。 本当にひどい時期を知っている方は、「考えられない」とおっしゃいます。 あのとき命をいただいたのは、何か大きな力に支えられたからだという気がします。 そう考えると、この命を何かに役立てなくては、人の為になることをしたいと思うのです。 かといって、気負いはないんですよ。むしろ昔より、ずっと楽。 人間にはいろいろな欲があるでしょう。そのうちいくつかの欲は、病気を境に消えてしまいました。 「人は人、私は私」と心底思えるようになったので、嫉妬心も湧かないし、人の言動で動揺したり傷ついたりしない。 だから生きていて、とても楽なんです。一所懸命生きていたら誰かが必ずそれを見ていてくれるだろうし、 積み重ねによって新しい道が開けると信じられるようになったから、 いつも前向きな気持ちでいられるし、以前よりアクティブでポジティブかもしれません。

――― 「幸せは自分の心の中にある」とおっしゃっていましたが、「幸福」は自分で作るしかないんですね。

やっぱり若い頃に比べると、今は台詞や歌を覚えるのに、何倍も時間がかかります。 産みの苦しみに悶々としますが、とにかく、やるしかない。 でも大変な分、繰り返し、繰り返し台本を読んで、お稽古をして、 やっと形になった時の喜びは、本当に言葉にはならないぐらい大きいんです。 だから、仕事をやめられない。それは、努力をしたから得られる喜びなんですよね。 なにごとも、自分が動いて、自分で道を切り開いていけば、必ず喜びを得られるし、幸せでいられると思います。 その喜びがエネルギーになって、「また頑張ろう」と思えるんですね。

――― その喜びやエネルギーが、若々しさや人間としての張りにつながるんでしょうね。

そうでしょうね。私は歩きながら人間を見るのが好きですが、 若い人でも、背中や膝が曲がっていると、「もったいないなぁ。こんないい服を着ているのに」と思います。 その人の背中に、生活がすべて透けて見えるような気がするんですよ。 きっと、部屋はこんな感じで、こんなものを食べているんだろうな、と。 精神の張りがある人は、背筋をしゃんと伸ばして、さっそうと歩きますよね。 すると、そんな高い服を着ていなくても、すごくステキに見えてきます。 それにしても、街を歩いていると、暗い顔をしている人が多いわよね(笑)。 「お若いのに、お気の毒ねぇ」と思ってしまう。気持ちの持ちようだと思うの。 顔の造りなんて、関係ない。その人が幸福感を抱いていたら、キラキラ輝いていて、目の光も違う。 たまーにそういう人を見かけると、「素敵だなぁ」「可愛いな」と思い、嬉しくなってつい見てしまいます。

――― 自分が幸福な気分でいると、まわりの人をも幸せにするんですね。

そうですね。私は舞台に立つ人間ですから、なおさら、そういう幸福なオーラを持っていなくてはいけないと思います。 観客の皆様に、何か受け取っていただきたいから。ですから、幸せでいるのも、私の大事な仕事でしょうね。

――― ところで番組で、膠原病には紫外線がとても悪いとおっしゃっていましたが、それはどうしてなんですか?

第9回*安奈淳さん 詳しい理由は説明してもらいませんでしたが、症状を悪化させるようです。 入院する前、紫外線を浴びたら全身に発疹が出たんですが、それも病気の前兆だったんですね。 膠原病の患者は、紫外線を浴びると、すごくだるくなるんです。 ですから退院してからは、タクシーの中でも日傘をさしていました。 歩くのは好きですが、歩く時は日除けの手袋をして、完全防備です。だから夏は大変(笑)。 でも紫外線は、健康な方にもよくないんですよね。乳母車を押しているお母さんが、 自分は帽子をかぶってサングラスをしているのに、赤ちゃんを無防備に日光にさらしているのを見ると、 「なんとかしてあげたら」と心配になってしまいます。まだまだ皆さん、意識が足りないのではないでしょうか。 オーストラリアなどでは、子どもを日光にさらさないよう、すごく気をつけていますよね。

――― スキンケアは大人の女性が美しくなるためだけではなく、健康のために子どもの頃から気をつけたほうがいいようですね。

ほんと、そうだと思います。

インタビュー/テキスト 篠藤ゆり

Profile

安奈淳-あんなじゅん-
第9回*安奈淳さん 大阪府出身 1965年に宝塚歌劇団に入団
1975年に「ベルサイユのばら」オスカル役で宝塚黄金時代を築く。 退団後 様々なミュージカル・テレビに出演 。しかし、2000年に膠原病に倒れ闘病 生活を送るが 2002年に「風と共に去りぬ」の演技指導で仕事復帰を果たす。

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